ブルーカラーの生き方

作業者の熱中症とその予防について

ご安全に!
こんにちは,ビシカです.

6月に入り気温が30℃を超える地域が次々と出てきており,外で仕事をしている作業者にも熱中症発生のリスクが高まってきています.

暑熱時の生体反応の特徴としては「皮膚血管膨張反応」と「発汗」がみられます.

<皮膚血管膨張反応>
体内の熱が放散される ⇒ 体温以上の暑熱条件では外から熱が流入する(熱放散の意味がなくなる) ⇒ 末梢血管の抵抗が減少する ⇒ 血液が身体末梢部や下半身に滞留しやすくなる(血液の滞留により熱浮腫が生ずることもある) ⇒ 血圧や脳血流が低下する ⇒ めまい・吐き気・失神(熱失神あるいは熱虚脱)
<発汗>
発汗により体内の熱が放散される ⇒ 身体中の水分が喪失 ⇒ 水分を補給しない ⇒ 脱水症状 ⇒ 塩分(NaCl)を補給しない ⇒ けいれん(熱けいれん)
体重の3~5%以上の水分が喪失すると,体温上昇が起こり熱射病の危険が増す

また,熱中症にはⅠ度,Ⅱ度,Ⅲ度があり,Ⅲ度が一番重症です.

<熱中症Ⅰ度>熱失神/熱けいれん
熱失神

原因:末梢血管の拡張によって,脳への血液循環量が一時的に減少したとき
症状:めまい,生あくび,たちくらみ
熱けいれん
原因:大量の発汗後に水分だけを摂取して,塩分が不足したとき
症状:こむらがえり,筋肉の痛みを伴うけいれん(意識を失う「けいれん」ではない)
<熱中症Ⅱ度>熱疲労
原因:発汗に水分,塩分接摂取が追い付かず(体重の3~5%以上),脱水症状になったとき
症状:身体的・精神的無気力状態,頭痛,嘔吐
<熱中症Ⅲ度>熱射病
原因:温熱中枢(視床下部)まで障害され体温調節機能が失われたとき
症状:意識障害,意識を失うけいれん,血液凝固異常,肝臓・腎臓臓器障害
発汗が止まり皮膚表面が乾いた状態

Ⅰ~Ⅲ度にかかわらず,大量発汗により汗腺がふさがれ,発汗部位の皮膚に汗疹(あせも)ができる可能性がある.また,心臓血管系に負担が生ずるので,循環器疾患を有する作業者は症状悪化の危険性がある.

熱中症の予防ですが,主に「作業者への教育」「作業前の健康状態確認」「熱に順化する」「WBGT指数を用いる」「のどの渇きに関わらず水分・塩分摂取」「休憩場所の整備」「作業着」「気軽に休憩しやすい雰囲気づくり」の8項目が挙げられます.以下一つずつ説明していきます.

1.作業者への教育
熱中症の原因・症状・予防対策・応急処置・予防用品の取り扱い方・災害事例・関係法令など,熱中症に関する教育を作業前にあらかじめ教育することで,熱中症の怖さや注意点などを作業者に理解させる.

2.作業前の健康状態確認
作業前に健康状態を確認し,体調が悪ければ作業をさせない(本人が「大丈夫」といっても周囲から見て,体調が悪そうであれば,職長などに連絡する).

3.熱に順化する
暑さに対する慣れの有無は熱中症の発生に大きく影響するため,目安としては暑さに慣れていない状態からは7日以上かけて暑熱暴露時間を徐々に長くしていく.
梅雨の間など,湿度が高い時期も注意する.

4.WBGT指数を用いる
WBGT(Wet Bulb Globe Temperature:湿球黒球温度,℃)は,労働環境において作業者が受ける暑熱環境による熱ストレスの評価を行う指標であり,次式で計算される.
<屋外で太陽照射有>
WBGT値=0.7×自然湿球温度+0.2×黒球温度+0.1×乾球温度
<屋外で太陽照射無,または屋内>
WBGT値=0.7×自然湿球温度+0.3×黒球温度
簡易に測れる測定器がありますので,それを利用すればよいと思います.

以下は厚生労働省のホームページ「熱中症を防ごう」から一部抜粋した表です.

5.のどの渇きに関わらず水分・塩分摂取
自覚症状以上に脱水が進行する場合がある.また,新型コロナウイルスの影響もあり,マスク着用をして作業を強いられる場合は更にのどが渇きにくくなる(マスク着用していると,湿気がマスクの内側にたまり,のどが渇きにくくなる)ので,水分・塩分は定期的に摂取ように指導する.

6.休憩場所の整備
冷房,冷蔵庫(飲料水,氷,冷たいおしぼり用),洗面台を備えた休憩場所を用意し,作業者が自由に利用できる環境を整える.また,塩分補給飴なども用意する.

7.作業着
体温調節ができるように通気性の良い防暑冷却服(クールジャケット)の着用を検討する.また,扇風機付きの空調服も検討する.

8.気軽に休憩しやすい雰囲気づくり
新規入構者や作業場の環境,作業終了時間まで時間が迫っているときなど,休憩を取らないで作業をしてしまうことがある.休憩を取らないと熱中症の危険が増すので,定期的な休憩時間とは別に休憩をこまめにとったり,マイペースに作業をしたりできる雰囲気づくりが重要となる.休憩の取り方は個人個人異なる.

今まで述べた8項目のなかで,2番目「作業前の健康状態確認」と8番目「気軽に休憩しやすい雰囲気づくり」は属人的で人間関係に絡むので難しいかもしれません.しかしながら,体調が悪い時に正直に申告して作業しないことや積極的に休憩することは作業者を守るために(会社からみれば,労働災害を防ぐために)やっていることなので,「さぼっている」わけではないことを理解してほしいと思います.

それでは,次稿お会いしましょう.
ご安全に!

ABOUT ME
技術士ビシカ
【職業】ものづくりを愛する製造系エンジニア 【保有資格】 技術士(化学部門),エネルギー管理士(熱),ボイラー技士(特級,一級,二級),高圧ガス製造保安責任者(第一種冷凍機械,甲種化学),甲種危険物取扱者,公害防止管理者(大気関係第1種,水質関係第1種),第一種衛生管理者、第一種作業環境測定士(金属類、有機溶剤,特定化学物質)など 【好きな言葉】 『大丈夫.心配ない.なんとかなる.』(一休禅師)『化学の力は無限大』